クオークローン・ぷらっとから借入れがあった方

 旧クオークローン(現「クラヴィス」、旧「東和商事」「リッチ」「ぷらっと」)から借入れ、プロミスで借り換えた事案(「切替事案」)につき、平成23年9月30日、旧クオークローン(現「クラヴィス」)に対する過払い金をプロミスに対して請求できるという最高裁判所の判決が出ました(第2小法廷・5名全員一致)。
 今後は、下級審の裁判所(地方裁判所・簡易裁判所・高等裁判所)もこの判断に従って判決をしていくことになります。
 この判決は、「切替事案」に関するものですが、「債権譲渡事案」についても下級審の裁判所は同様の判断をするのではないか、と考えています。
 ただし、プロミスは、平成23年12月10日現在、最高裁判所の判断が出たにもかかわらず、旧クオークローンの過払い金を支払うとの和解には応じていません。第1審判決後、プロミスが控訴するのかどうか、今後の対応を見守っているところです。


(問 題 点)
 プロミスの子会社であった株式会社クオークローン(プロミスの子会社であるリッチ、東和商事、シンコウが合併してできた会社。旧称・株式会社ぷらっと)は、平成19年6月1日に新規貸し付けの受付を停止し、貸金債権をプロミスへ移転しました。
 クオークローンは、平成19年7月頃から10月ころまで、顧客にプロミスからの借り換え(プロミスからクオークローンの借入残高と同額を借り入れ、クオークローンに全額を返済する。これを「切替契約」と呼んでいます。)を呼びかけ、プロミスからの借入金で貸付金の回収をしました(これを「契約切替事案」といいます。)。
 その後、クオークローンは、平成19年10月ころ、借り換え(切替)に応じない顧客の大部分について、貸金をプロミスに譲渡しました(これを「債権譲渡事案」といいます)。
 債権移転後、平成20年末くらいまでは、プロミスはクオークローンの過払い金の支払いに応じており(自らクオークローンとの取引の紛争等の窓口がプロミスであると通知を出していた。)、問題は起きていませんでした。
 平成21年4月、プロミスは、「クオークローン(当時、「タンポート」)をネオラインキャピタル株式会社に売却しました。同年5月、「タンポート」は、「クラヴィス」に社名変更しました。
 親会社がネオラインキャピタルになってからは、「クラヴィス」も「ネオラインキャピタル」も過払い金の返還に応じないこと、「クラヴィス」に対して判決を取り差押えをしても回収が困難であることから、クラヴィスの過払い金をプロミスに請求できないか、と多くの弁護士が考えるようになりました。
 しかし、クラヴィスはプロミスの子会社でしたが別会社(別法人格)ですから、形式的な法律論としてはプロミスはクラヴィスが顧客に負う過払い金の支払義務を負いません。 他方、親子会社であったプロミスとクラヴィスが契約の切替を呼びかけ、支払能力のないクラヴィスに過払い金を残して事実上回収できないようにしておきながら、プロミスは顧客に対して貸金債権を請求できるというのは極めて不当な結論です(クラヴィスからお金を借りた人は、プロミスに借り換えなければ、少なくとも借入残額分は過払い金と相殺できたはずです。)。
 形式的な法理論に対して、様々な法律構成と実質論を展開し、プロミスとの攻防が続き、裁判所の判断は、プロミス敗訴と勝訴に分かれていました。
 今回最高裁判所が判決を出したのは「契約切替事案」ですが、「債権譲渡事案」ではどうなのかが今後の争点です。理論的には別ということになりますが、実質的な価値判断としては「契約切替事案でプロミスが債務を負うのであれば債権譲渡事案ではそれ以上に債務を負うべきである。」との判断になると考えています。ただ、プロミスは、「債権譲渡事案」については、事案が違うとの主張を続けるような気がします。
 以下、プロミスに責任を認めた代表的な理論構成を書いておきます。
1 契約切替事案
   「残高確認書兼振込代行申込書の提出により第三者のためにする契約について受益の意思表示をした。」という構成。
   プロミスは、クラヴィスとの間で、平成19年6月18日、クラヴィスが顧客に対して負担する過払い金返還債務について、プロミスも責任を負う(併存的債務引受)との合意をした(第三者のためにする契約)。
   その後、平成20年12月15日、プロミスとクラヴィスとの間で、「プロミスはクラヴィスの過払い金返還債務について責任を負わない」との変更契約が締結された。
   プロミスは、この変更契約があるから責任を負わないと主張しています。
   これに対して、プロミスに責任を負わせる判決は、平成19年6月の合意と同20年12月の変更契約との間に行われた「残高確認書兼振込代行申込書の提出により第三者のためにする契約について受益の意思表示をした。」と認め、プロミスに責任を負わせています。
  少し難しい話ですが、解説をしてみます。
  まず、民法に「契約当事者の一方が、第三者に対してある給付を約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求できる(民法第537条1項)。」という規定があります。これが、「第三者のためにする契約」です。
   ここでは、「プロミスとクラヴィスとの間で、プロミスがクラヴィスに対する過払金請求権を持っている人に対して、クラヴィスに代わって支払うと約束したときは、過払い金請求権を持つ人は、直接プロミスに過払い金を請求できる。」ということになります。
  次に、民法は、「第三者の権利は、その第三者が債務者に対して契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する(民法第537条2項)。」と規定しています。ここで言えば、クラヴィスに対して過払い金請求権を持っている人が、プロミスに対して、「クラヴィスの過払い金を払って欲しい。」と意思を示したときに権利が発生することになります。 さらに、民法は、「第三者の権利が発生した後は、当事者は、これを変更し、又は消滅させることができない。」と規定しています。ここで言えば、平成20年12月15日の変更契約がなされる前に、クラヴィスに対して過払い金請求権をもつ人がプロミスに対して「クラヴィスの過払い金を払って欲しい。」という意思表示をしていれば、変更契約をしてもプロミスは1度負った責任を免れないことになります。
   そこで、平成19年6月の併存的債務引受合意と同20年12月の変更契約との間になされた「残高確認書兼振込代行申込書の提出」をもって、「クラヴィスの過払い金を支払って欲しい。」との意思表示をしたと言えるかが争点となっています。もちろん、「残高確認書兼振込代行申込書」には過払い金のことは直接的に書かれてはいません。それを理由としてこれを認めないという判決もあります。他方で、「残高確認書兼振込代行申込書」が提出されたときの状況等を考慮して、これを受益の意思表示であると認める判決も出ています。 
2 債権譲渡事案
  債権譲渡事案とは、クラヴィス(当時クオークローン)がプロミスに貸金債権を譲渡した事案です。
  この場合も、債権を譲り受けた者が、当然に債務まで引き受けるのではないということが法律の原則論となります。したがって、形式的な法律論としては、クラヴィスからプロミスが貸金債権を譲り受けたとしても、当然にはクラヴィスに対する過払い金返還義務を負わないということになります。
  そこで、ここでも形式論と実質論が争われることになります。また、債権譲渡事案には、「残高確認書兼振込代行申込書」の提出もないので、契約切替事案のように「受益の意思表示があった」という理論構成は取れないことになります。
  ① 「貸金債権と過払金返還債務は表裏一体の関係で密接に関連しており、過払金返還債務のみを承継の対象から除外するには、借主の承諾が必要である。」として(プロミスが責任を免れるとする)変更契約の効力を借主に及ぼすことはできないとして、プロミスに返還義務を認める理論構成があります。 
   この判決は、「基本契約が締結され、過払金の充当合意が認められるような場合は、みなし弁済が成立すれば貸金業者に貸金債権が認められ、逆にみなし弁済が成立しない場合には、利息制限法の上限金利で引き直された上、貸金業者が過払金返還債務を負うことにもなる関係にあって、貸金債権と過払金返還債務は表裏一体の関係で密接に関連しているところ、その内の過払金返還債務のみを承継の対象から除外することは、借主に取引期間全体について利息制限法所定の利率での引き直し計算をすることによって過払金の返還請求ができる利益を失わせ、支払を受けられる過払金総額を減少させる不利益を生じさせるのであるから、このような不利益を借主に負わせることになる変更契約の効力を借主に及ぼすには、変更契約についての借主の承諾を要する」とした上で、借主から承諾を得たという証拠がないとして(プロミスが免責されるという)変更契約の効力が借主に及ばない(すなわち、プロミスは責任を免れない。)との判断をしました。
  ② 信義則違反
  実質的な利益状況を考慮し、端的にプロミスが過払金返還債務を負わないと主張することは信義則に反し、許されないとして、プロミスに責任を認める判決もあります。

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